管理認定制度がスタート

改正されたマンション管理適正化法が2022年4月に施行されました。この法律では、国が定めるマンション管理の適正化の推進を図るための基本方針に基づき、都道府県(市)がマンション管理適止化指針を作成し、マンション管理の適正化を啓蒙すると同時に必要に応じて管理組合に対し、助言、指導することができます。また、管理組合は自らの管理計画を地方公共団体に提出し、一定の基準を満たす場合は認定を受けることができます。

「管理計画認定制度」の認定基準案では管理組合運営、管理規約、管理組合の経理、長期修繕計画の作成及び見直し等17項目の基準があり、すべてを満たした管理計画が認定され、マンション管理センターのサイトにて公表されます。認定制度の目的は管埋水準の底上げを図り、既存マンションの流通を促進することにあります。流通市場を意識し、いかに自分たちのマンションの居住価値が優れているかを意識した管理が必要です。他人任せにして長期修繕計画の適切な見直しを行わず、修繕積立金の不足で必要な修繕が行われないと、建物・設備等の劣化を招くことになります。
また、認定を取得することで、
(1)区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる。
(2)適正に管埋されたマンションとして、市場において評価される。
(3)適正に管理されたマンションが存在することで、立地している地域価値の維持向上に繋がる。
等の効果が期待されます。

次表に管理計画認定の基準を示します。

 

管理計画認定の基準

管理組合の運営

・管理者等及び監事が定められている
・集会(総会)が定期的に開催されている

管理規約

・管理規約が作成されている
・管理規約にて下記について定めている
  ・緊急時等における専有部分の立ち入り
  ・修繕等の履歴情報の保管
  ・管理組合の財務、管理に関する情報の書面による父付(または電磁的力法による提供)

管理組合の経理

・管理費と修繕積立金の区分経理がされている
・修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
・修繕積立金の滞納に適切に対処されている(直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3カ月以上の滞納額が全体の1割以内であること)

長期修繕計画の作成
及び見直し等

・長期修繕計画(標準様式準拠)の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金が集会(総会)で決議されている
・長期修繕計画が7年以内に作成または見直しがされている
・長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
・長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
・長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定されて修繕積立金の平均額が著しく低額でない
・計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっている

その他

・組合員名簿、居住者名簿が適切に備えられており、1年に1回以上は内容の確認を行っている
・都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものである

管理運営に関する内容は一般的

上表に示す基準によれば、管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理については、「マンション標準管理規約」に記載されている内容が多く、既に取り組まれている組合が多いと思われます。ただし、高齢化による理事のなり手不足や、滞納問題を抱える組合も増えてきており、組合の活動自体が形骸化してきている実態もあります。この管理計画認定制度を通じて、改めて組合活動を見直す良い機会となればと思います。

長期修繕計画の策定と見直しが重要ポイント

認定制度の重要項目として長期修繕計画策定と見直しが含まれておりますが、管理適正化法の改正を受け、令和3年9月に長期修繕計画作成ガイドラインも見直されました。大きな変更点としては、長期修繕計画の見直し期間を30年以上で2回の大規模修繕を含むこととされました。ほかにも、建替えを進めやすくするために、マンション建替円滑化法も改正され、除却の必要性認定の対象を広げたり、容積率の緩和特例の適用拡大や敷地分割制度も設けられました。 また、修繕積立金のガイドラインも見直され、積立方式についても、段階増額積立方式ではなく、均等積立方式の力が望ましいとの記載が人りました。これは、将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず、修繕積立金が不足する事例が生じていることもその要因のようです。将来にわたって安定的な修繕積立金を確保する観点から均等積立方式が望ましいとされています。但し、段階増額積立方式として将来の負担増とする場合でも、その計画が自らの将来の資金計画との関係の中で無理のないものであり、総会にて承認されていれば問題ないとの解釈もできます。そのためには、やはり定期的に長期修繕計画を見直し、それに基づき修繕積立金を設定し直すことが重要となります。

管理計画認定制度の申請の流れ

マンション管理新聞1186号掲載の記事によれば、多摩市では、マンション管理適正化推進計画を策定し、管理計画認定制度を実施する予定となっています。申請方法は、直接地方公共団体に認定申請する方法と、マンション管理センターの事前確認を受けて地方公共団体に認定申請を行う流れがありますが、 多摩市では後者の申請方法となるようです。
また、認定基準については、地方公共団体独自の基準を追加できるようになっていますが、多摩市としては追加項目なしとしています(2023年3月現在)。

申請に必要な書類
項目 提出書類
管理組合の運営 集会議事録の写し
・認定申請を行うことの決議、管理者、監事の専任の決議
・1年以内に開催されたもの
管理規約 管理規約の写し
管理組合の経理 貸借対照表および収支計算書
・直前の事業年度の集会で決議されたもの
・直前の事業年度の各月において組合員が滞納している修繕積立金の額が確認できる書類
長期修繕計画の作成および見直し等 長期修繕計画の写し
集会議事録の写し
・長期修繕計画の作成または変更を決議したもの(7年以内)
その他 組合員名簿、居住者名簿を備えるとともに、年一回以上更新していることに関する表明保証書等
※自治体が独自基準を設けている場合はその指示による
管理計画制度の実施状況(2022年6月現在)

東京都では令和4年4月1日時点で推進計画を作成し、認定制度を実施しているのは、板橋区、八王子市、府中市、小金井市の4区市ですが、他の区市でもほとんどが令和4年度中から令和6年度の実施に向けて準備中、もしくは検討中とのことです。実施している4区市の中で板橋区は独自の基準として、理事会の実施、要援護者名簿の作成と適正な名簿の管理、マンションの設計図書、点検記録、修繕履歴等の図書の適切な保管等を定めていることが注目されます。 多摩市では令和4年度中、もしくは令和5年度からに実施を目指しており、特に独自の基準は設けず、国の認定基準とするようです。

管理計画認定制度の効果

マンション管理計画認定制度の効果としては、次の3項目が挙げられます。
①区分所有者の管理への意識が向上し、管理水準の向上が期待される。
②管理状況が明確にされ、市場での評価が期待される。
③フラット35、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇が受けられる。

申請手続きの申請者

管理計画の認定の申請主体はマンションの管理組合の管理者であり、申請にあたってはその旨を総会で決議を得ておく必要があります。なお複合用途マンション、団地の場合は以下によります。

➣複合用途マンションの場合

 全体管理組合の管理者が申請主体となる。ただし複数の管理者が存在する場合は店舗管理組合を除く住宅管理組合と全体管理組合の管理者の連名による申請となる。

➣団地型マンションの場合

 区分所有法68条の規約を定めている団地では、団地管理組合の管理者が申請の主体となり、68条の規約を定めていない団地は、団地管理組合と各棟管理組合の管理者の連名による申請となる。

認定の手続き

認定申請を希望するマンションの管理者等は申請にあたっては、その旨を集会で決議を得ておく必要があります。認定申請の手続きは、事前確認サービスの利用の有無や他団体の管理評価サービスの併用の有無によって下図の通り5つの異なった流れになります。図の申請パターンのうち、⑤はマンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス(以後「支援サービス」)を利用しないで直接自治体に申請する方法ですが、このパターンはあまり利用されないと思いますので、①~④について説明を加えます。

(マンション管理センターHPより引用)

パターン① 管理者がマンション管理士に認定の事前確認を直接依頼する場合

 申請者が事前確認講習を修了したマンション管理士に直接事前確認を依頼し、事前確認完了後に支援サービスのシステム上で申請する方法です。マンション管理センターは確認したマンション管理士が事前確認講習の修了者であることを確認した上で、認定基準に適合していることを確認し、当該自治体に申請通知メールを送信する。自治体は支援システムから認定申請書の内容を確認し、事前確認の審査結果を活用して審査し、その結果を支援システムに入力する。その後、申請者は支援システムから認定通知書を出力することができる。

※認定通知書に公印がある場合は自治体から別途受け取る。マンション管理センターは公表することに同意を得たマンションの名称等を認定マンション閲覧サイトにて一般公開する。

パターン② マンション管理業協会の管理適正評価制度を併用する場合

 申請者はマンション管理業協会にマンション管理適正評価及びマンション管理計画認定の事前確認を依頼し、マンション管理業協会は管理計画の事前確認、マンション管理適正評価を実施し、管理計画認定申請に係る情報を支援システムにてマンション管理センターに送信する。以降は①と同じ。マンション管理業協会は適正評価制度の評価結果を同協会の適正評価サイトにて公表する。

パターン③ マンション管理士会連合会のマンション適正化診断サービスを併用する場合

 申請者は マンション管理士会連合会にマンション適正化診断サービス及びマンション管理計画認定の事前確認を依頼し、マンション管理士会連合会は管理計画の事前確認、マンション適正化診断サービスを実施し、管理計画認定申請に係る情報を支援システムにてマンション管理センターに送信する。以降は①と同じ。

パターン④ マンション管理センターへ直接事前確認の申請をする場合

 申請者は支援システムにて添付書類をアップロードの上、事前確認の申請をする。マンション管理センターは事前確認講習を修了したマンション管理士に事前確認を依頼し、認定基準に適合していることが確認された場合は申請者に適合通知メールを送信し、当該自治体に申請通知メールを送信する。以降①と同じ。

※「マンション適正化診断サービス」・日本マンション管理士会連合会
 マンション管理士が、申請マンションに赴き、管理運営状況、修繕計画状況、法定点検・修繕工事のほか、防犯対策、防火管理、保険事故履歴などマンションの管理状況全般を対象に、目視・書類チェック・ヒアリングを行い、診断結果やアドバイスを記載した診断レポートを作成。結果は「S・A・B」に評価される。S評価には「S評価ステッカー」が発行されるほか、S・A評価のマンションについては不動産・住宅情報サイトに掲載される。

※「マンション管理適正評価制度」・マンション管理業協会
 評価項目は管理計画認定制度と同様な項目に点検、修繕履歴や防災対策、耐震性能などを含め30項目で、100点満点で採点し、6段階の評価となる。評価の有効期限は1年間で、マンションの設備や管理状況など、より詳しく、新しい情報がマンション管理業協会のサイト上に公開されるが、公開項目を選択することができる。

マンション管理適正評価制度

「管理計画認定制度」とは別に、マンション管理業者で組織するマンション管理業協会でもマンションの管理状況について評価する「マンション管理適正評価制度」が始まります。こちらは国の「管理計画認定制度」が5年ごとの更新なのに対し1年ごとの更新となっており、評価項目も約30項目と多いうえ、評価の結果を100点満点で採点し、5段階の区分評価としています。評価の結果はマンション管理業協会のホームベージで公表されます。マンション管理センターでは両者の評価結果をワンストップで取得できるようなシステムを検討中です。

出典:多摩マンション管理組合連絡会NEWS         
第36号(2022/3/14)第37号(2022/6/13)から引用、編集